no.5 MA apartment
LDK形式に「間」を取り入れたリノベーション。
市場に出回る間取り形式のマンションは狭い空間に小部屋を一つでも多くつくることに価値を置いている。
しかし、それは固定壁で空間を細分化することとなり、住み方や使い方も限定していくことになる。
施主からの要望は「住まい、仕事場どれにでも対応できる空間にしてほしい」という内容であった。
そこで”間取らない”ことをコンセプトに置き、ライフスタイルが多様化した現代の住まい方に相応しい従来の「間」を再構築することにした。
廊下としてあった部分を元のリビング、ダイニング側へと延長し、床仕上げを切り替えて土間に見立てる。
この土間を軸として、すべての部屋、機能が房となり連なる。
土間と木床との間には段差がなく、土間部分も部屋として使うことができるが、床仕上げを切り変えることで領域をつくり出している。土間は時に部屋の一部となり、キッチンの作業場、トイレや風呂場を結ぶ中間領域となるのである。
2.3mであった低い天井は広がりを持てるよう、天井ボードを剥がし、準不燃化した垂木を大胆にそのまま見せる仕上げとした。
垂木の下地感をなくすため、角を落とし、すべて丸めて、ビス孔はすべて埋められた。
この垂木天井を利用して、観葉植物や照明を自由にレイアウトし、位置を変えることができる。
居間部分には機能を持たない自由なスペースだけが存在し、どう生活するかは使い手が決める。
母体の建築は一般的なRC造マンションではあるが、冷たい廊下の先にある玄関扉を開けると中には異世界が広がる。
奥から差し込む光が少し光沢感のある土間へ反射して、奥ゆかしい雰囲気とどこか懐かしい風情を生み出す。
設計デザイン:yate 矢野健太
施工:株式会社G-NEST、株式会社エークラフト
構造:鉄筋コンクリート造
規模:室内床面積47.16㎡、バルコニー5.39㎡